SKOOTA GAMES IndieGames Notebook Interview
EVENT REPORT

廃校でバグ探し?『デバッグしないと出られない部屋』レポート

by SKOOTA 2026.07.31

こんにちは。SKOOTAGAMES ネゴラブチームのモブです。

先日、7月26日に開催されたインディーゲーム展示イベント『デバッグしないと出られない部屋』に足を運んでまいりました。

「バグを見つけないと出られない」という、なんとも尖ったコンセプトのイベント。さぞかし殺伐としたデバッグ作業が待ち受けているのかと思いきや……会場となった学校跡地に足を踏み入れると、そこには予想に反して非常にアットホームな空間が広がっていました。

全体の規模としては教室3つ分ほど。2つの教室に合計20のタイトルが並び、もう1つの教室は受付や講演スペースとして使われていました。

今回が記念すべき第1回目であり、今後も開催を予定しているとのこと。インディー界隈で多様なイベントが産声を上げる中、プレイヤーが「デバッガー」として参加し、脱出を目指すというこのユニークな仕組みがどのような体験を生み出すのか、一人のゲーマーとして、そして開発者の端くれとして非常に興味深いところです。

さて、今回は会場で出会った数あるバグ(?)の中から、特に私の心に引っかかったタイトルをいくつかご紹介したいと思います。

『水着の部屋からの脱出』― 狂気すら感じる「水着」への執念

まず一つ目は、『水着の部屋からの脱出』という脱出ゲームです。

その名の通り「脱出ゲームなのに、部屋の中にあるアイテムがすべて水着」という、突き抜けたコンセプトの作品です。プレイヤーは、海辺での謎の事故により奇妙な島に閉じ込められた主人公・水木岳 希輝(みずぎだけ きてる)となり、部屋を調査しながら謎を解いていきます。

こういったアイデア勝負のゲームを見るたびに私がいつも思うのは、「やるなら最後までやり切るべき」というメッセージです。本作はまさにそれを体現していました。プレイ中、テキストやイラストの端々から滲み出る「水着に対する信じがたいほどの熱量とこだわり」こそが、このゲームにおける最大の“バグ”ではないかと思えるほどです。もちろん、ゲーム自体の完成度も申し分ありませんでした。

なんと本作、すでにフリーゲームとして「エンディング1」に限定してプレイ可能とのことですので、気になる方はぜひその狂気……いえ、こだわりをチェックしてみてください。

水着の部屋からの脱出

『Arsenal Stigma』― 王道に添えられた確かな「安定感」

2つ目にご紹介するのは、『Arsenal Stigma』というローグライクアクションゲームです。

ドット絵とローグライクという、インディーゲームファンなら思わず垂涎してしまう王道の組み合わせが光る一作です。特筆すべきは、ステージごとに使用できる武器や対峙する敵が変化するという点。基本的にステージをクリアするごとに得られるアドバンテージが用意されており、プレイヤー自身が望む特性を一つずつ積み上げていくシステムとして実装されていました。

プレイヤーが自ら積み上げられる部分と、選択できる部分が明確に分かれている、非常に安定した設計だと感じました。

本作をプレイしていてふと思ったのですが、イベントの尖ったタイトルとは裏腹に、今回試遊したゲームからは致命的な「バグ」を見つけることはほとんどできませんでした。もちろん、些細なUIの表示や「もっとこうなったら嬉しい」というプレイヤーとしてのささやかな要望は尽きませんが、それらを考慮しても全体的な完成度は目を見張るものがあります。

その中でも本作は、明確なコンセプトと分かりやすいゲームシステムを持ち合わせた「安定感のあるゲーム」の筆頭として、今回ぜひ取り上げたいと感じた次第です。まだSteamのストアページは公開されていませんが、今後リリース予定とのことですので、興味のある方はぜひ公式SNS(@stigma24633)をチェックしてみてください。

その他、会場で目を惹いたタイトルたちをご紹介

今回は写真をお見せできなかったり、紙面の都合で深く掘り下げられなかったものの、プレイして強く印象に残った3つの作品も駆け足でご紹介します。

『無刃刀 -真打-』

「斬れない剣」を持つ戦闘狂の主人公が、敵を殺さずに逆境を切り抜けるというアクションパズルゲームです。

強烈なビジュアルとは裏腹に、コンセプトと完璧に噛み合った緻密で繊細なパズル設計がなされており、思いのほか頭を悩ませる奥深さが印象的でした。

『あたしの夏休み2』

フリーゲームプラットフォーム「unityroom」でプレイ可能なタイピングゲーム。

私のようにタイピングが得意ではないユーザーに寄り添う初心者向けから、極限を求める熟練者向けまで、幅広い層を包み込むレベルデザインが見事でした。

(ちなみに、本日の執筆時点ではAmazonギフト券がもらえるキャンペーンも実施中とのことです!)

『Nightmare Journey 1135』

『水着の部屋からの脱出』と同じく、RPGツクール製のゲームとして独特の魅力的なアートと雰囲気を放っていた一作。

しかし個人的に最も胸を打たれたのは、以前別のイベント(TokyoIndies)で試遊した際に存在したバグが、今回しっかりと“デバッグ”され、美しく改善されていた点です。

まさに本イベントにふさわしい、開発者さんの執念を感じました。

終わりに:「デバッグ」がもたらす、真の「コミュニケーション」

さて、いくつかのタイトルをご紹介してまいりましたが、最後にこの『デバッグしないと出られない部屋』というイベント全体の意義について、少しばかり考えたことをお話しさせてください。

冒頭でも触れた通り、今回試遊したゲームからは、いわゆる進行不能になるような「バグ」を見つけることはほとんどありませんでした。では、なぜ私たちはこの部屋に閉じ込められ、「バグ」を探すことを求められたのでしょうか。

そもそも、デバッグという作業は、一人で完結するものではありません。プレイヤー(デバッガー)の行動パターンを見て開発者が気づくこともあれば、プレイヤー自身が感じた違和感や「もっとこうしてほしい」という要望を、直接開発者に伝えなければならない場面も多々あります。

つまり、このイベントが真に促していたのは、「バグを見つけること」そのものではなく、「バグを探すという名目を借りた、開発者とプレイヤーの対話」だったのではないでしょうか。そう考えると、この空間は『デバッグしないと出られない部屋』ではなく、実は『コミュニケーションをとらないと出られない部屋』だったのかもしれません。

昨今のインディーゲームイベントでは、時に「説教オジサン」と揶揄されるような、フィードバックを装ってマウントを取ろうとする一部のユーザーの存在が問題視され、開発者とユーザー間のコミュニケーションに対する心理的なハードルが少し上がってしまっている側面もあると感じています。

そのような状況下において、「全員がデバッガーになる」という設定を設けることで、参加者が自然とゲームに対する意見や感想を言葉にし、開発者と対等な立場で意見交換ができる場を作り出した本イベントの試みは、単なるユニークなコンセプトを超えた、非常に大きな意義を持つと感じました。

ゲームのクオリティを高めるための「デバッグ」が、結果として人と人との温かい「対話」を生み出す。そんな不思議で、そして少しだけ希望の持てる空間を体験できた一日でした。

第2回が開催された暁には、皆さんもぜひ、ご自身の目で「バグ」と「コミュニケーション」を探しに行ってみてはいかがでしょうか。それでは、また次回のレポートでお会いしましょう。