
こんにちは、SKOOTA GAMESのネゴラブチームに所属しております、モブです。
これまで、高円寺、川越、京都と、日本各地の熱気あふれるインディーゲームイベントを渡り歩いてきた私ですが、今回は少し趣向を変えまして……東京ビッグサイト(東展示棟)にて開催された大規模国際総合展「コンテンツ東京」に行ってまいりました。
インディーゲームのイベントといえば、作り手と遊び手の熱が直接ぶつかり合う、いわば「ライブハウス」のような空間です。しかし、今回の「コンテンツ東京」はそれとは全く異なります。ライセンシング、最新の生成AIテクノロジー、ショートドラマなど、エンターテインメント産業を支えるあらゆる要素が集結した、企業間ビジネス(BtoB)を中心とする巨大な見本市なのです。
そんな、普段の主戦場とは異なる異色のイベントで、なぜ我々が記事を書くのか。そして、一体何をレポートするのか。


結論から言いますと、今回お届けする内容は、普段のインディーゲームイベントのレポートと本質的には何も変わりません。ズバリ、「面白いモノを作っている人(クリエイター)とモノ」の紹介です。
実はこのコンテンツ東京の会場内には、『クリエイターEXPO』という、イラストレーターや映像作家、デザイナーなど、多種多様なジャンルの個人クリエイターたちが、ご自身のポートフォリオを武器に出展している特設エリアが存在します。巨大なIP(知的財産)ビジネスが何億というお金を動かし、最新のAI技術が業界の形を変えようとしているその最前線にあっても、結局のところすべての始まりは、個人のクリエイターが放つ「好き」や「狂気」、そして作品から滲み出る理屈抜きの「良さ」にあると、私は感じたのです。
なおかつ、この『クリエイターEXPO』における他業種のクリエイターたち。あの方々が持つエネルギーと、作品の魅力というものは、私が愛してやまないインディーゲームに出会った時のあの感覚とちょっと違うものでした。
色々理由付けをしていますが、総論「好きなものに目が惹かれた」というのが一番率直で伝わるかもしれないですね。
とりあえず今回は、この巨大なコンテンツ産業の海の中で私が出会った、ひときわ眩しい光を放つ3名のクリエイターと、その魅力的な作品たちをピックアップしてお届けしたいと思います。
それでは、まいりましょう!
理屈を飛び越える「直感的な可愛さ」 ―― イラストレーター『mozzu』さん
最初にご紹介するのは、カートゥーン風のキュートなイラストを主軸に活動されているイラストレーターの『mozzu(@mozzu123)』さんです。
全体的にデフォルメが強く効いたイラストが専門で、キャラクターの純粋な可愛らしさが引き立つ低頭身のSDイラストから、キャラクターの体のラインや躍動感が想像できる高頭身のイラストまで、幅の広い表現を楽しむことができました。全体的にポップな色使いや小物の配置センスが光り、ご本人が掲げている「CATOON x KAWAII」というキャッチフレーズの通り、海外のカートゥーンアニメと日本のアニメスタイルが絶妙なバランスで同居しているのが印象的。
……と、少し小難しくスタイルを解説してみましたが、もっと単刀直入に言わせてください。私がmozzuさんのブースに強く惹きつけられた最大の理由は、「一番わかりやすく『可愛い』から」です。


今回の『クリエイターEXPO』には、ミニキャラから等身大のリアルなイラストまで、本当に星の数ほどの多種多様なスタイルのイラストレーターさんたちが集結していました。しかし、その中でもmozzuさんのイラストは、パッと見た瞬間にその可愛さが伝わるほどのインパクトがあったと思うんです。 もちろん、特有のポップな色合いや、存在感のある力強い線画が目を引く理由であることは間違いありません。ですが、最終的な行き着く先は「だって可愛いから仕方ないじゃないか」という、理屈を飛び越えた感情に他なりません。
今回のブースを彩っていた表のキャラクターたちは、ご自身のオリジナルキャラクターとのこと。この記事を読んで少しでも私と同じようにその「可愛さ」の引力を感じた方は、ぜひmozzuさんのSNSをチェックして、その魅力的な作品群に触れてみてください。
予想外の角度から飛んできた痛烈なフック ―― スポーツ専門イラストレーター『有原正流』さん
続いてご紹介するのは、スポーツを専門とするイラストレーターの『有原正流(@MasasruArihara)』さんです。
有原さんのブースを拝見して最初に私が感じたのは、「意外にも、スポーツ専門のイラストレーターさんって少ないんだな」という素朴な気づきでした。 もちろん今回のイベント全体を見渡せば、人体の躍動感、筋肉の表現、激しい感情の機微など、圧倒的なエネルギーを感じさせる素晴らしいイラストは数え切れないほどありました。しかし、そのすべての要素の集合体とも言える「スポーツ」――私たちがテレビや漫画で日常的に目にするような、純粋なアクションと競争、成長が詰まった領域――そこに一点集中してフォーカスを当てているケースは、意外なほど見かけなかったのです。
そんな有原さんの作品群の中で、私が個人的に最も強く印象に残ったのは「真正面を見据える男性選手の顔」を描いた一枚のイラストでした。

ボクシングや空手など、強烈でダイナミックなポーズを描いた絵が並ぶ中で、「なぜ、あえて静的な正面のカットを?」と一瞬疑問が頭をよぎりました。しかし次の瞬間、私の脳内に蓄積されたスポーツのデータベースが、その絵の「前後」を猛烈な勢いで補完し始めたのです。 「これは試合開始直前、選手同士が対峙するフェイスオフの瞬間だ」「いや、過酷な計量をパスし、正面を向いて決意を固めるあのシーンかもしれない」…など。もちろん、そのほかにもニュース映像に一瞬映り込んだ対戦相手の不敵な姿、それこそ格闘漫画『高校鉄拳伝タフ』に登場するガルシアの姿が思い浮かぶ方もいるでしょう。そうした様々な文脈が、一枚の静止画から一瞬にして立ち上がって、あっという間に腑に落ちたのです。
躍動感あふれるアクションカットが並ぶ中で、あえて静かな決意に満ちた選手の正面顔をラインナップに加える。その構成こそが、ご本人が掲げられていた「20年のスポーツ観戦が裏付ける説得力」というキャッチフレーズを、文句なしに証明していました。(個人的な想像であって、オフィシャルではございません)

全体的にポップで可愛らしい、いわゆるSNS等で頻繁に目にするトレンド感のあるイラストが多かった今回の会場。そうした絵から得られるエネルギーも素晴らしいものですが、有原さんの絵が放つ「むき出しの生々しい躍動感」に直接触れた感覚は格別だったと思います。 先ほど紹介したmozzuさんの絵が真正面からの抗いがたい魅力(ストレート)だったとすれば、今回の有原さんのイラストは、予想もしていない死角から急に飛んできた強烈なフック。そんな風に例えたくなるような、見事な一撃でした。
圧倒的な「密度」と「重さ」が宿る獣たち ―― イラストレーター『Subinスビン』さん

最後にご紹介するのは、韓国のイラストレーター『Subinスビン(subin0517)』さんです。
ブースの壁を彩っていた数点の絵。私がそこで直面したのは、絵の一枚一枚がまるで「物理的な重さ」を持っているかのような、圧倒的な密度感でした。
「動物のイラスト」と言うと少し語弊があるかもしれません。正確には、服を着て、本を読み、人間のように行動し思考しているような「獣たちのスナップショット」と呼ぶべきでしょうか。例えば、緻密に編まれたセーターに帽子とヘッドセットを身につけ、片手にスマートフォンを持ったクマ。あるいは、机の前に魚の入ったコーヒーと本を置き、何を考えているのかわからない表情を浮かべるトドなど。
どこかで見たことのあるような日常の風景に、「動物である」という強烈な違和感が重なり、見る者に心地よい当惑(戸惑い)を抱かせる、非常に面白い空間でした。

Subinさんの作品を語る上で絶対に外せないのは、先ほども触れた「圧倒的な密度感」です。当然ですが、キャンバスそのものは木枠と布、そしてタッカーの針の重さしかないはずです。しかし、そこに描かれた動物たちはズッシリとした肉の重みを感じさせ、どこか異質なほどの存在感を放っていました。ただ単に「日常風景の人間を動物に置き換えて描いただけ」の絵では、到底ここまでの存在感は出せない。並大抵の労力ではないはずです。
なぜこの絵がこれほどの「重さ」を持っているのか。その明確な理由はまだ言語化できていませんが、一つのヒントになりそうなご本人の言葉があります。Subinさんは冗談交じりにこうおっしゃっていました。
「毛を一本一本描いていると、ストレスも発散できて良いんですよね(笑)」

ここにきて初めて知られたとのことです。
決して小さくないキャンバスの上に、道具を使って毛を一本一本描き込んでいく。それはもはや、ある種の「修行」に近いのではないかと思いました。一枚の絵に何千、何万という毛を描き込む際、その一筆一筆に何らかの思考や感情が宿っているのだとすれば、作品からこれほどの重圧感が滲み出ているのもうなずける気がします(あくまで私の勝手な推測ですが)。
昨今のインディーゲーム界隈でも、『Finding Polka』のような繊細で密度の高いアートスタイルが注目を集めています。果たして、Subinさんのイラストのような凄まじい密度のアートを、今後インディーゲームの界隈で見る日が来るのでしょうか。 「絶対に無い」とは言えませんが、少なくとも「そう簡単にお目にかかれるものではないだろうな」と、ゲーム開発者として半ば遠い目をしてしまった、そんな一日でした。
終わりに ―― 巨大な見本市を歩き終えて
ポップで直感的な可愛さの『mozzu』さん、独自の視点と文脈でスポーツを切り取る『有原正流』さん、そして圧倒的な密度と重さを描き出す『Subinスビン』さん。
今回の「コンテンツ東京」は、企業間の巨大なビジネスや最新テクノロジーが交差するBtoBの展示会でしたが、私が結局持ち帰ってきたのは、こうした「個人のクリエイターが放つ熱量」の記憶ばかりでした。
しかし、それこそがエンターテインメントの核であり、我々が最も大切にしなければならない「原点」なのだと思います。どんなに市場が大きくなっても、どんなにテクノロジーが進化しても、結局最後に人の心を動かすのは、誰かの「狂気」や「執念」が詰まった作品に他なりません。
普段のゲームイベントとは全く異なる場所でしたが、そこで得られたインスピレーションと刺激は計り知れないものでした。SKOOTA GAMESも、彼ら・彼女らの熱量に負けないよう、自分たちの「好き」を突き詰めたゲーム作りに邁進していきたいと思います。
それでは、今回の潜入レポートはこの辺で。また次回の記事でお会いしましょう!