
こんにちは、SKOOTA GAMESのネゴラブチームに所属しております、モブです。
先月、京都みやこめっせにて開催された日本最大級のインディーゲームの祭典「BitSummit THE PUNCH」に参加してきました! 今年のサブタイトルである「THE PUNCH」が示す通り、会場はクリエイターたちの並々ならぬ熱気と、新しいゲームを求めるプレイヤーたちの興奮がぶつかり合う、まさに熱いリングのような空間でした。
インディーゲームの魅力は、何と言ってもクリエイターの「好き」や「狂気」が、一切のフィルターを通さずにプレイヤーへ直接叩きつけられる点にあります。今年のBitSummitでも、そんな規格外のエネルギーを持った作品たちが数多く展示されていたかと思います。
そこで今回のレポートでは、数ある展示作品の中から、私にとって「まるで強烈なパンチを食らったような」衝撃的なタイトル3つを厳選してご紹介したいと思います。 どれも一度プレイしたら忘れられない、強烈な「一撃」を持った作品ばかりです。
それでは、まいりましょう!
お前も「虫」にならないか?―― 『Insecta Vindicta』
このゲームのご紹介に入る前に、一つだけ質問させてください。皆さんは「虫」を食べたことはありますか?
なぜ急にこんな質問をするのかと言いますと、私がこのゲームに出会ったのは、BitSummitの会場を歩いていた際、見知らぬ子どもから突然「はい、これあげる」と手渡された“あるモノ”がきっかけだったからです。 ビニールで包まれたそれを何気なく確認し、それが「食用昆虫」であると気づいた時には、すでにその子の姿はありませんでした。慌ててその子を探しに向かった先で待ち受けていたのが、この『Insecta Vindicta』のブースだったのです。
ドイツの開発者が制作したという本作は、ある男性によって無残に殺害(殺虫?)された仲間の仇を討つため、一匹の「ハエ」となって復讐を果たすという、ぶっ飛んだ設定のアクションゲームです。 プレイヤーはハエを操作し、男性の周りを飛び回って彼の怒りを買い、壊したい家具の周辺へ誘導。そして適切なタイミングでさらに彼を激怒させ、その攻撃を素早く避けることで、彼自身の攻撃によって家の中をボロボロに破壊させていくのが目的となります。

ゲームのプレイ感覚としては、最初は独特の操作や立ち回りを覚えるのに少し苦労しましたが、慣れてしまえば意外なほどプレイしやすい印象を受けました。特に人間の攻撃を避けるアクションが、QTE(クイックタイムイベント)のようなタイミング重視のシステムになっているため、超人的なコントローラーさばきは要求されません。適切なタイミングと瞬時の判断力、そしてほんの少しの運があれば、サクサクとステージをクリアしていくことができるのです。
このゲームの面白いところは、「ハエになって人間を怒らせて家を破壊させる」という出落ちのようなシチュエーションに反して、操作感がしっかりと作り込まれているというギャップです。 そして何より、敵である人間の動きや行動原理が妙にシンプルで、それがかえって大きな笑いを誘う点もたまりません。昨今のインディーゲームは全体的なクオリティが非常に高くなっていますが、本作には、時折見かける挙動のバグや関節が奇妙な方向に曲がるようなモーションエラーすらも、プレイヤーに不快感を与えるのではなく「ひとつの面白さ」として作用してしまう、インディーならではの不思議な魅力がありました。


複雑なシステムや数値、ステータス配分に頭を悩ませることなく、目の前で巻き起こるドタバタ劇という「状況」ひとつだけで喜怒哀楽を存分に楽しめる。そんなシンプルかつ強烈な体験を突きつけてくる作品でした。
しかし、今回何よりも強烈だったのは、やはり最初の「食用昆虫との出会い」だったと言わざるを得ません。(ちなみに、後で恐る恐る食べてみた昆虫は、パプリカ味のシーズニングされていて思いのほか美味しかったです)。 ある意味で、今回の「BitSummit THE PUNCH」というテーマに最もふさわしい、出会いからプレイ後までしばらくグロッキー状態から抜け出せなくなるほどの、恐ろしくも魅力的な一作でした。
閉鎖社会という名のホラー体験。音を立てたら即、銃殺 ―― 『Hermit Computer』

続いてご紹介するのは、北朝鮮に潜入したアメリカのスパイとなり、機密情報を抜き取るシミュレーションゲーム『Hermit Computer』です。
「スパイの潜入ミッション」と聞くと、なんとなくかっこいいスパイアクションを思い浮かべるかもしれませんが、本作の全体的なテイストは驚くほど「ホラー」に近いものでした。情報を盗み出すという任務の重圧感と、北朝鮮という未知で閉鎖的な社会を表現するために、ゲーム全体に重く暗い雰囲気のサウンドとグラフィックが散りばめられています。
ゲームのシステムは、最近パーティゲームとしても注目を集めている『Don’t Scream』に少し似ています。つまり、「一定以上の音量を出さないようにパラメーターを管理しつつ、タスクを進行する」といった形式です。ただし、マイクを通したプレイヤー自身の声ではなく、ゲーム内で発生する「騒音」が測定の対象となるのが本作の特徴ですね。
主人公であるスパイは、つい先日持ち主が処刑されたばかりという北朝鮮のPCをハッキングして情報を得なければなりません。そのため、古いPCから鳴る駆動音をはじめ、マウスクリック音、起動音など、あらゆる操作音に神経を尖らせる必要があります。(「じゃあPCのスピーカーのミュート設定にすればいいのでは?」という野暮なツッコミは一旦置いておきましょう)

プレイヤーはPCとそのPCが置かれた薄暗い部屋という限定された空間で、与えられたヒントを元に目的の情報を探し出し、試行錯誤を繰り返します。その最中、ボリューム(騒音ゲージ)が一定を超えると、怪しい気配に気づいた警備員が足音を立てて近づいてきます。もし発見されれば、即座に銃で撃たれて息絶えるという……非常に厳格でシビアなシステムを採用しています。
このゲームの何がそれほど衝撃的だったのか。それは、「北朝鮮という閉鎖的で圧迫感のある社会を、一つのホラージャンルとして見事に昇華している」という点に尽きます。 もちろん見る視点によって受け取り方は変わると思いますが、個人的に北朝鮮という国は直近、インターネット上ではしばしばミーム(ネタ)として消費されやすい対象だと感じています。国家の政治的な問題や思想など、デリケートな要素が絡み合っているせいもあるでしょう。しかし、このゲームをプレイしていると、「ああ、やっぱり北朝鮮ってこういう場所なんだよな」という現実の輪郭を改めて突きつけられるような感覚に陥るのです。
誤解を恐れずに言えば、これは何らかの政治的な発言というよりも、「北朝鮮という対象が持つ特殊性」がエンターテインメントとしてどう読み取られ機能するのかを語っていると思います。そして、日本のみならず世界中の人々が集まるBitSummitという場で本作が披露されたこと自体、私にとって非常にショッキングなプレゼンテーションでした。おそらく私以外にも、「世界のどこかにある場所」程度にしか認識していなかった人々に、強烈な一撃を与えたのではないでしょうか。本タイトルはそれほどの説得力を持ったバイブスとテクスチャを備えていました。

このプレイ体験を振り返ってみると、私が本作に最も近い感覚を覚えたのは、以前我々SKOOTAでもインタビューさせていただいた『PIA(피아)』というタイトルです。朝鮮戦争中に地雷を解体するというあのゲームも、戦争の残酷さや、当たり前すぎて忘れがちな「戦争の恐怖」をゲームとして見事に再構築した作品でした。『Hermit Computer』から受けた衝撃は、あの時感じたものと非常に根が似ている気がします。 偶然にも、そのどちらもが韓国のインディーゲームであるという事実は、非常に興味深い巡り合わせですね。
予期せぬ方向から重いパンチを食らったかのように、ゲームが終わった後もその「音」と「風景」が頭の中にこびりついて離れない。北朝鮮とスパイという珍しいテーマと、圧倒的な雰囲気で武装したシミュレーションゲーム『Hermit Computer』でした。
可愛い見た目だけど、容赦なし。制限が生み出すドパインまみれの登山体験 ―― 『ロミスト山のてっぺんMount Lomyst』

最後にご紹介するのは、今回のBitSummitで「ファミ通賞」と「ゲームメーカーズ賞」という、名誉あるメディア賞をダブル受賞した作品『ロミスト山のてっぺんMount Lomyst』です。
実はこのゲーム、授賞式での制作者さんの「私はメディアに何のコネもありません」というスピーチが非常に印象に残っておりまして。「本当かな? よし、確かめに行こう」と、半ば冷やかしのような気持ち(もちろん冗談です)でブースへ足を運んだのがプレイのきっかけでした。
ゲームの画面構成やグラフィックは至ってシンプルです。マリオシリーズのようなブロックで構成されたマップの上に、同じくブロック一つ分ほどのサイズ感のキャラクターがポツンと一人。プレイヤーは、画面の右側へとそびえ立つ山のような構造物を、「手」と「フック(発射する銛のようなイメージ)」の2つだけを駆使して登っていくという、非常にシンプルなミッションに挑みます。


しかし、驚くべきことにこのゲームには「ジャンプ」がありません。 マリオのような横スクロールのアクションゲームを引き合いに出しておいて「ジャンプがない」という事実に、少なからず驚かれる方もいるでしょう。本作で可能なアクションは、基本的に「左右への移動」「目の前の壁を掴んで登る」、そして「上下左右にフックを発射する」の3つだけです。 この限られた3つの選択肢のみで、目の前に立ちはだかる険しい(?)ブロックの山肌を切り開いて進んでいく。それこそが、このゲームの持つ究極のゲーム性であり、アルファでありオメガなのです。
正直なところ、言葉で説明を聞いただけでは「ふーん、それでそんなに面白いの?」と思われるかもしれません。かく言う私も、授賞式でゲームの説明を聞いた時点では「面白そうだけど、触ってみないとわからないな…」と少し疑っていたのが本音です。しかし、実際にプレイしてみて私の脳天を貫いたのは、「メディアの審査員も制作者さんも、本当に良いところに目をつけたな」という鮮烈な気付きでした。
ゲームが「単純(シンプル)」であるということは、すなわち「分かりやすい」ということです。そして分かりやすいということは、プレイヤーが自ら積極的に思考し、行動する余地が山ほど残されているということでもあります。プレイヤーは与えられたアクションしか選択できませんが、逆に言えば「与えられた枠組みの中でなら、どんな攻略法でも編み出せる」というゲームの妙理が、このタイトルの中には見事に実装されていました。

全く異なるジャンルのゲームではありますが、私が本作から受けた感覚や衝撃に最も近いのは、グローバルヒットタイトルの『Öoo』でした。グラフィックがシンプルで、システムに明確な「制限」があるからこそ、「この限られた手札でどうすれば最大の利益を得られるか」をプレイヤーは絶えず考え続けることになります。その思考のサイクルが、複雑で派手な外部からの刺激がなくても、プレイヤーの脳内に自動的にドパミンをドバドバと生成してくれるのです。
何より本作は、「どれだけ高く登れたか」がゲームのステータス(成果)を直に決めます。そして、一度操作をミスして落下してしまった際の「損失」が非常に大きいため、登るか落ちるかのギリギリの瀬戸際で生まれるドパミンの乱高下が相対的にとてつもなく激しいのです。 こんなにも可愛らしくてポップなアピアランスの中に、これほどまでに恐ろしい(?)体験が潜んでいるとは想像もしていなかった私にとって、本作はまさに「衝撃の初体験」と呼ぶにふさわしい一作でした。
今回のBitSummitでは試遊時間が「10分間」という制限がありましたが、もしそれが無ければ、私はこのブースで何十分、いや何時間でもこのゲームに張り付いていたでしょう。なんと恐ろしいものか。ある意味一番ホラーに近かったかもしれない、Bitsummitの注目作品『ロミスト山のてっぺん』でした。
終わりに ―― 次のリング(舞台)を待ちわびて

名残惜しさを背中に感じながらBitSummitの会場を後にしましたが、私の頭の中にはすでに、次なるインディーゲームイベントへの期待が膨らんでいます。
食用昆虫から始まるハエの復讐劇、北朝鮮という閉鎖空間を描いたスパイホラー、そしてジャンプのないストイックな登山アクション。
どれも全く違うベクトルから、私たちの脳天に鮮烈な「パンチ」を打ち込んでくれた素晴らしい作品たちでした。こうした規格外のアイデアと情熱に直接触れられるからこそ、インディーゲームのイベント巡りはやめられないわけです。
今回出会ったゲームたちが、今後さらなるブラッシュアップを経て、また別のイベントで私たちに再会してくれることを心から願っています。皆さんもぜひ、気になるタイトルがあればチェックして、彼らの放つ「一撃」をその身で体感してみてください。
それでは、熱気冷めやらぬ京都からのレポートはこの辺で。また次回の記事でお会いしましょう!