SKOOTA GAMES IndieGames Notebook Interview
EVENT REPORT

街歩きとゲームが溶け合う場所、再び ―― 【川越 GAME DIGG 2026 レポート 後編】

by SKOOTA 2026.05.08
後編は、コエトコの入り口から始まります。

こんにちは、SKOOTA GAMESのネゴラブチームに所属しております、モブです。

楽しかった「川越 GAME DIGG 2026」から、気付けば1週間以上の時間が過ぎてしまいました。すっかり日常に戻り、楽しかったお祭りの余韻も少しずつ薄れていく頃かもしれません。

しかし、だからこそ今回の【後編】は、今年の川越イベントを締めくくる「最終列車」としてお届けしたいと思います。あの日の晴天の空気をもう一度思い出しながら、そして次に控える新たなインディーゲームイベントへの期待を膨らませるための、良いスパイスになれば幸いです。

それでは、前編に引き続き、川越の街で出会った素晴らしい作品たちをご紹介していきましょう。

容赦なき難易度に思わず笑顔? 青空の下のハードコア体験 ―― 『宇宙人ハルオ君』

画面が良く撮れてないのは天気が良すぎたからです。

後編の最初にご紹介するの良く撮れてないのはューティング、いわゆるTPSジャンルの1人プレイ用「エクストラクション・シューター」である『宇宙人ハルオ君』です。同ジャンルの代表作としては『Escape from Tarkov』などが有名ですね。

普段あまりこのジャンルに馴染みのない方に向けて簡単に説明すると、「危険が潜む特定のエリアに潜入し、脅威を排除あるいは回避しながら必要な物資を集め、無事に生還(脱出)することを目的としたゲーム」と言えるでしょうか。 この「脅威」の正体はゲームによって様々で、それ自体が作品の個性に直結する部分だったりします。本作の場合は「水没したある廃墟(宇宙船?)」のような空間を舞台に、プレイヤーを感知して襲いかかってくる謎の怪生物やタレット(自動砲台)がその役割を担っていましたね。プレイヤーは何らかの理由でこの過酷な環境を生き抜くことになったケモミミの女の子を操作し、物資の獲得と脱出を図ることになります。

さて、このゲームについて語る上で、どうしても外せないエピソードがあります。 屋外の展示エリア「コエトコ」に展示されていた本作を偶然見つけ、プレイしようと席に着いたときのこと。制作者の方からある意味深な質問を投げかけられたのです。

「TPSジャンルのゲームは、プレイしたことありますか?」

チュートリアルの画面。ここまではスムーズだったのですが、、

私がその質問を不思議に思ったのは、TPSというジャンル自体がゲームユーザーの間では非常にポピュラーであり、操作の基本さえ分かれば比較的誰でも入り込みやすいジャンルだと認識していたからです。

しかし、その質問が一つの「伏線」であったことに気づいたのは、チュートリアルを終えて本編のプレイが始まってからのことでした。今にして思えば、あの質問は「これほど過酷な難易度のTPSに適応できますか?」という、最低限の覚悟を確認する制作者さんなりの配慮だったのです。

そもそも「エクストラクション・シューター」という、脅威と戦いながら生存と脱出を目指すジャンル自体、TPSの中でも決してカジュアルでメジャーな部類とは言えません。「シューティングゲームが得意」というだけでは生き残れない、才能や適性を要求されるシビアな世界なのです。そんな中で本作は、インディーゲームの展示イベントで出会うとは想像もしていなかったほどの「容赦のない難易度」を見せつけ、私を大いに慌てさせました。

もちろん、インディーゲームのイベントを回っていると、時折「これ、どうやってクリアする前提で作ったんだろう?」と首を傾げたくなるような難易度のゲームに出会うことがあります。そういうケースはたいてい、システム自体の癖が強すぎるか、あるいは制作者が想定するプレイスキルと実際のユーザー体験との間にズレが生じている場合のどちらかです。 しかし、この『宇宙人ハルオ君』はそのどちらでもありませんでした。理不尽なまでに難しいのですが、それは間違いなく「意図して設計された難易度」だったのです。

死んでもベースキャンプで再度復活(?)することができます。

その本気度を痛感した決定的な場面があります。 あるゲートを通過する際、プレイヤーは二つの選択を迫られます。一つは「警報を鳴らし、襲い掛かってくる敵の群れを全滅させてから進む」ルート。もう一つは「提示された数字をモールス信号で入力し、静かに通り抜ける」ルートです。 何も考えずに前者のルートを選び、圧倒的な敵の暴力の前に散った私に対し、制作者の方は「モールス信号を入力する手もありますよ」と教えてくれました。

「何をすると?」と思いながらふとブースのテーブルを見ると、そこにはなんと「本物のモールス信号のコード表」が置かれていたのです。「あ、この人は本気(ガチ)なんだ」と悟った瞬間でした。 結局、表を見ながら制限時間内に入力するという鬼のような難易度に手こずり、最終的には制作者の方に直接入力していただく形になったのですが(笑)、ご本人でさえ入力に苦労されている姿を見て、このゲームの難易度に対するただならぬ「こだわり」と愛情を確信しました。

結果として、ミッションを完了して帰還する途中でとんでもない物量の敵に遭遇し、クリアには失敗した私ですが。しかし不思議なことに、「クリアできなかった」という悔しさや不満よりも、この尖りきったゲーム性と難易度にただただ笑ってしまうような、清々しい手触りだけが残ったのです。 むしろ中途半端なレベルデザインであれば、ユーザーとしてモヤモヤの気持ちが残ったかもしれません。しかし、ここまで一切の妥協なくハードコアを突き詰め、もはや「愉快さ」の領域にまで昇華させている点には、感嘆するほかありません。(このジャンルを愛するゲーマーは、むしろこういうヒリヒリした体験を求めていると思いますしね)

2度目のゲームオーバー。この時クリアは無理でした。

昨年の川越では比較的ゆったりとした雰囲気のゲームを中心にプレイしていたこともあり、コエトコの澄み切った青空の下で、これほどまでにハードでストイックなゲームをプレイできたことは、非常に新鮮で最高のコントラストを生み出していました。

『宇宙人ハルオ君』は、現在まだSteamのストアページなどは公開されていないようです。この記事を読んで「その鬼畜さ、私の腕で挑戦してやろうじゃないか!」とゲーマー魂に火がついた方は、ぜひ制作者の方のSNSなどを通じて、今後の開発状況を追いかけてみてください。

制限されたスペックが完成させる「体験」の魔法 ―― 『ミミックアイドル』+『推しぬいチューン』

ゲーム関連ではないのですが、講堂2回にはおなじみにホワイトボードがおかれていました。

続いてご紹介するのは、展示会場の一つである「蓮馨寺(れんけいじ)講堂」の2階で出会った2つのゲーム、『ミミックアイドル』『推しぬいチューン』です。これらは「GB Studio」で制作された、ゲームボーイ風のシューティングゲームとなっています。

それぞれタイトルが違うように、ゲームの内容も異なります。 まず『ミミックアイドル』ですが、こちらは新たなアイドルをキャスティングするため、才能ある子にハートを撃ち込んで「好感度」を稼ぐというユニークなシューティングゲーム。今回のイベントでは、なんとスライムをアイドルとして口説き落とすためのステージが用意されていました。

面白いのは、道中で発生する「ギフトチャンス」です。たまに落ちてくるプレゼントボックスを拾い、スライムが喜ぶプレゼントを探し当てるという可愛らしいシステムで、正解のプレゼントを選べばゲームの目標である好感度が上昇し、間違えれば下がってしまう。そんなシンプルで楽しいサービスタイムが、良いアクセントになっていました。

まさか?と思って選んだギフトですが、
さすがにきわどいみずぎを喜んでくれるわけがなく、、

もう一つの『推しぬいチューン』も同じくシューティングですが、こちらは「推し活」が趣味の女子高生が主人公。推しのためのぬいぐるみを作るという日常的なテーマのゲームです。 こちらも操作形式が非常に独特で、『スペースインベーダー』のようにプレイヤーに向かって迫り来る「4文字のひらがな」を撃ち落としていきます。ただし、ここには一つだけ絶対的なルールがあるのです。それは「必ず最後に『お』の文字を残さなければならない」ということ。

最後に残った文字で「〇しぬい」という単語が完成するため、無事に「お」を残せば「おしぬい(推しぬい)」となって成功。逆に変な文字を残してしまうと、本来作りたかった推しのぬいぐるみとは似ても似つかない、謎のぬいぐるみが出来上がってしまいクリア失敗となります。 前の『ミミックアイドル』もそうですが、プレイヤーに提示するルールとシチュエーションが実にユニークな2作品でした。

最後に残す文字を間違うとこんな感じでゲームオーバー。

この二つのゲームをプレイして、私が最も驚き、そして特別さを感じた部分は、何と言ってもその「ユーザー体験」にあります。

先ほど色々と美辞麗句や世界観を並べ立てましたが、それらを全て排除してしまえば、このゲームの根源は「ただのシューティング」なのです。しかし、それを包み込んでいるシチュエーションと世界観のおかげで、プレイヤーが味わうのは「他のどんなゲームでも経験したことのない独特な体験」へと変わっています。「これが俗に言うクリエイターの個性であり、才能というものなのか?」と思わされるほど、プレイヤーが触れるコンテンツを「特別な何か」に変える企画力とアイデアが、これまで見てきたインディーゲームの中でもひときわ輝いていると感じました。

そしてもう一つ驚かされたのが、ゲームの完成度とボリュームの「完璧なバランス」です。 (ちなみに現在ご紹介している『推しぬいチューン』はインターネット上で無料でプレイ可能なのでぜひ触ってみてほしいのですが)、全体のプレイ時間やボリューム、ユーザーが触れるコンテンツの「厚み」のようなものが、本当に心地よいレベルでまとまっているのです。 昨今のインディーゲームの傾向として、ゲームシステムがどんどん先鋭化したり、ハードコアなユーザー向けに深化していく流れがあると感じていますが、このゲームはそうしたトレンドとは明確に一線を画す領域で、確かな存在感を放っていました。

『推しぬいチューン』は、ステージをクリアすると
メイン画面にて作ったぬいぐるみが並びます。
こういう細かい要素も良いですよね。

この点が気になった私は、ブースにいらっしゃった制作者の方にお話を伺い、腑に落ちる事実を知りました。なんとこの二作品、実際のゲームボーイでも起動できるゲームとして作られているのだそうです。 ご存知の通り、ゲームボーイというハードのスペックは、私たちが普段ゲームを遊んでいるPCやコンソール機に比べれば極めて制限されています。つまり、私が楽しんだこのゲームは、最初から「限られた容量とスペック」という土台を前提に作られていたのです。先ほど熱弁したゲームボリュームの完璧なバランスについても、この制約があったからこそ明確に示されたものだったのだと、納得がいきました。

実を言うと、私はニンテンドーDSからゲーム機に触れた世代なので、ゲームボーイのような旧世代機をリアルタイムで楽しんだ経験がありません。当時のユーザーがどのようなプレイスタイルで、ゲームが彼らにとってどのような存在だったのかを、肌感覚で推し量ることはできないのです。

ただ、もし当時の「ゲーム」や「遊び」の形がこういったものだったのだとしたら……もしかすると今のインディーゲームは、何か一番大切なものを置き忘れてきているのではないか? とすら思わされました。 ゲームを作る立場としても、そして楽しむ立場としても、ハッとさせられるような新しい視点を与えてくれた2作品、『ミミックアイドル』と『推しぬいチューン』でした。

👇公式サイト(megamittz)

暮れゆく空とシンクロした、眠れない夜の静かな大冒険 ―― 『ながい夜の宇宙で』

最後に紹介するのは、こちらのブースです。

今回のレポートの最後を飾るのは、タイトルからも伝わってくるような、叙情的な雰囲気のアートが魅力的な2D探索アドベンチャー『ながい夜の宇宙で』です。

本作は「眠れないある日の夜」を舞台に、主人公のノアが眠りにつく方法を探して家の中を彷徨うという、非常にミニマルで静かな物語。今回の体験版では、主人公のノアが眠れずに起き上がるところから始まり、突如家の中に現れた「光る生き物」との遭遇、そして共に家の中を歩き回り、ノートパソコンを開いたり冷蔵庫を覗いたりといったパートをプレイすることができました。

個人的な感想から言わせていただくと、この作品は今回の川越 GAME DIGGで「最もこの場に似合っていたタイトル」だったように感じます。 私がこのゲームをプレイしたのは、イベントの終了時刻が迫り、少し日が傾き始めた頃でした。ゲームの中で描かれる夜の空気感と、現実の川越の街が少しずつ熱を冷まし、夕暮れへと向かっていく雰囲気が、なぜか見事に調和しているように思えたのです。

ブルーライトは、睡眠に良くないよ…!

もちろん、それは単なる偶然のタイミングに過ぎないかもしれません。しかし、昨年の雨の川越で出会った『MeloMisterio』や『里山のおと 春さんぽ』が、その雨模様に驚くほど溶け込んでいたのと同じように、イベントを振り返った時に最も心に残るものって、こうした「現実の空間とゲームの体験がシンクロした瞬間」なのではないかと思うのです。

ゲーム内で特に印象深かった瞬間についてもお話しさせてください。 それは、主人公のノアがバッテリーの残り少ないノートパソコンを開き、溜まっていたメールや検索履歴を閲覧するシーンです。そこに並んでいたテキストの数々が、なんとも言えず胸を突くのです。 友達(あるいは知人かもしれません)から愛が込まれたかのような安否確認メール。その真逆に、勤め先の人事から届いた有給休暇の日数に関する事務的な連絡と支払いが済んでいない料金の明細メール……。

すべてを直接的に語るわけではないのですが、見る者の想像力を強く掻き立てる生々しさがそこにはありました。 さらに検索履歴を見ると、「パスタ 簡単 一人前」といった可愛らしいワードが並ぶ一方で、「背中 バキバキ」や「ヘラヘラ 意味」といった、読んでいるこちらまで思わず苦笑いしてしまうような、妙にリアルなワードまで幅広いのです。

あったかい牛乳を飲んで眠りにつこう。

実は今回の体験版では、主人公の背景や性別について具体的な説明は一切ありませんでした。しかし、こうした日常の断片が散りばめられているだけで、プレイヤーは自然と主人公の生い立ちや抱えている背景を想像することができます。この「語りすぎない」余白の残し方に、ユーザーに対する意識と配慮の深さを感じました。

眠れない夜、いつものように部屋をうろつき、キッチンで牛乳を温めて飲む。ただそれだけの、特別でも何でもない日常のワンシーンを、モニター越しのプレイヤーに「特別な体験」として感じさせるというのは、想像以上にハードルの高いことだと思います。 今後、様々なイベントでこのゲームに出会えることを願っていますし、この記事を通じて「ちょっと遊んでみようかな」と興味を持っていただけたら嬉しい限りです。私にとっては、この川越という場所で本作に出会えたことに感謝しつつ、今回のレポートの締めくくりにふさわしい一作となりました。

終点から、次のプラットホームへ

去年お会いしたタイトルも再び。『里山のおと 春さんぽ』『PONKOTS』さんです。

過酷な難易度を笑い飛ばした『宇宙人ハルオ君』、制限されたスペックが体験を磨き上げた『ミミックアイドル』『推しぬいチューン』、そして夕暮れの川越と完璧にシンクロした『ながい夜の宇宙で』

振り返ってみれば、今回の川越 GAME DIGGも、開発者の方々の強烈な「こだわり」と、街が持つ独特の空気が混ざり合う、唯一無二の空間でした。

この記事が公開される頃には、皆さんの興味はすでに「次のイベント」へと向かっているかもしれません。もうすぐ5月開催のBitSummitが近づいていますし。今回の川越での熱気や、開発者たちが仕掛けた「驚き」の数々は、きっと次のイベントへと繋がる素晴らしいバトンになったはずです。

次に私たちが降り立つプラットホームでは、一体どんなゲームとの出会いが待っているのでしょうか。 私も一人の開発者として、そしてゲームを愛する一人の社会人ゲーマーとして、次のイベントを楽しみに待ちたいと思います。

それでは、長きにわたった川越レポートにお付き合いいただき、ありがとうございました。また次回の記事でお会いしましょう!

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