SKOOTA GAMES IndieGames Notebook Interview
EVENT REPORT

街歩きとゲームが溶け合う場所、再び ―― 【川越 GAME DIGG 2026 レポート 前編】

by SKOOTA 2026.05.01
当日は、PRESSと書いてあるでかい腕章とともに
川越の街を徘徊していました。

こんにちは、SKOOTA GAMESのネゴラブチームに所属しております、モブです。

今回は、4月25日に開催されたオープンタウン型ゲームイベント「川越 GAME DIGG 2026」のレポートをお届けします。昨年の第一回目はあいにくの雨模様でしたが、今年は見事な快晴!午後からはポカポカとした日差しも差し込み、絶好のお出かけ日和となりました。我々SKOOTAも、今回は正式なメディアパートナーとして取材に参加させていただきました。

とはいえ、雨だった昨年がダメだったかというと、決してそんなことはありません。雨音が響く「コエトコ」や、風情ある川越の街並みは、間違いなく特別な体験でした。実際、今回会場でお話しした制作者さんの多くが昨年も参加されていたことからも、天候に関わらずこの場所が持つ「居心地の良さ」のようなものが伝わってきますよね。

さて、「オープンタウン型イベントって何?」という方のために少しだけご説明を。 一般的なインディーゲームイベントは一つの大きな会場(例えば東京ゲームダンジョンの都立産業貿易センターや、BitSummitのみやこめっせ等)にブースが密集していますが、川越 GAME DIGGは川越市内の約3箇所に展示会場が点在しています。街を歩きながら様々なゲームに触れていく、渋谷で開催された「SHIBUYA GAME WEEK」に近い感覚ですね。

そして、この形式の決定的な特徴は「一般ユーザーの流入」に尽きます。 閉ざされた展示空間ではなく、街を歩いている不特定多数の人々――インディーゲームという言葉すら知らない観光客や、普段は家庭用コンソール機しか遊ばない層がふらっと立ち寄る。開発者にとっては新しい層への最高のアピールになり、遊び手にとっても「川越観光+未知のゲーム体験」という、非常にリッチなコンテンツになりえます。

「なんでわざわざ会場を行き来しなきゃいけないの?」と最初は思ったかもしれないゲーマーの方も、街を歩くうちにその不満はスッと消え去ったはず。川越の美しい風景は、点在するゲームや人々との交流を繋ぐ、立派な求心力として機能していました。

この記事が単なる「ゲームの紹介」として消費されるのではなく、あの日の川越の空気を吸った誰か、あるいはゲーム目当てで来て川越の情景に惚れ込んだ誰かが「そうそう、あんな素敵な場所だったよね」と頷けるような、そんな後日談になれば嬉しいです。

それでは、早速この街で出会った注目のゲームをご紹介していきましょう!

動画編集のようにゲームを“作る”快感 ―― 『MOP’N SPARK』

ドット絵がかわいいかったので、一枚撮らせていただきました。

まず最初にご紹介するのは、青と緑を基調とした強烈なピクセルアートが目を引く2Dパズルプラットフォーマー『MOP’N SPARK(モップンスパーク)』です。

世界観としては、清掃員と電気工事士のコンビが、汚いモンスターに覆われた街を救うというもの。スライムのような化け物をモップで退治し、配電盤を修理して電気を取り戻していく姿は、どこか『ゴーストバスターズ』シリーズを彷彿とさせます。(超常的な存在を「業務」として片付ける、あのプロフェッショナルな感じがですね。)

ビジュアルもさることながら、本作を語る上で欠かせないのが「映像や音声編集ソフトのタイムラインのようなゲームシステム」の独自性です。

どこか見慣れたマップ…!

言葉で説明するのは少し骨が折れるところですが……もし皆様の中に動画編集ソフトを触ったことがある方がいれば、直感的にピンとくるはずです。要するに、ゲームプレイを「一本の映像」に見立てて、各フレーム(時間軸)ごとにキャラクター(清掃員と工事士)がどう動くかをプログラミングしていくような感覚です。行動パターンは、左右の移動、ターン、ジャンプ、掴む(ツカム)、そしてモップとスパーク(修理)とシンプルにまとまっています。

このシステム、一見複雑そうですが、触ってみると驚くほど直感的に理解できます。マウスホイールでコマンドを選び、左右のクリックでフレームを入力・削除していくUIも、効率とわかりやすさを追求していて非常にスマートでした。(ここで「ショートカットキーも欲しい!」とまで要求するのは、さすがに欲張りでしょうか)

そして、私が最も感心したのは、このシステムが生み出す「遊びやすさ」です。

何だこのプレミアみたいなUIは…!と思ったらそのままだったのでびっくりしました。

映像編集のようにいつでも前後への再生・巻き戻しができるため、少しタイミングを間違えても、すぐにその直前のフレームまで戻って調整が可能です。最初から、あるいは特定のセーブポイントからやり直すのが常識である従来のパズルゲームに比べると、リトライにかかるストレスが圧倒的に少ないんですよね。また、見事にタイミングが合ってステージをクリアできた時の、「完璧なシーケンスを完成させた!」というような達成感(報酬感)も格別です。(もし各ステージのプレイ記録を保存できる機能があれば、この報酬感はさらに跳ね上がるだろうなと勝手に妄想していました)

ただ、ストレスフリーなシステムだからといって、ゲーム自体が簡単かというと全くそんなことはなく。パズルの難易度はしっかり高めで、実は私も最後のステージをクリアできずに席を立ってしまいました。

最後のステージ。激ムズで途中あきらめました。悔しい。

それでも、「いつかリリースされたら、ショートカットキーを駆使するベテラン映像クリエイターのように、流れるような手捌きでクリアできるようになりたい!」と思わせてくれる。システムとレベルデザインのバランスが絶妙な、大注目のタイトルでした。

日常の「タスク」と戦う? 謎多き研究室ライフ ―― 『PLEASE KNOCK: The Sloppy Researcher’s Life』

一つの会場である、りそなコエドテラスの奥側にあったタイトルです。
キービジュを見て思わず入りました。

続いてご紹介するのは、ゲーマーなら誰もが惹かれるレトロなドット絵が特徴的なアドベンチャーゲーム、『PLEASE KNOCK: The Sloppy Researcher’s Life』です。

主人公の「ニトロ」は、大学の研究室に所属する学生(おそらく院生?)。担当教授から「論文を出さなければ除籍だ」と宣告されている、少々、いや、かなり生活能力に欠けるキャラクターです。そんな彼の部屋に突然押し掛けてきたのが、もう一人のメインキャラクターである後輩の「クーヤ」。「教授のご判断で、僕があなたのお世話係を務めることになりました」と宣言する綺麗好きでコミュ力高めの彼と共に、半ば放棄されていた論文を完成させるべく奔走する……という、文字に起こすだけでも非常にユニークな設定の作品です。

この黒の多い画面が好き。テキストに集中できて、どこか落ち着きます。

私が本作をプレイして感じた感想は、大きく二つあります。

一つ目は、「背景設定の独特さ」です。 だらしない先輩と、しっかり者の世話焼きな後輩。キャラクターの組み合わせ自体はジャンルを問わずよく見かける王道ですが、舞台が「大学の研究室」である点が絶妙なスパイスになっています。青春真っ盛りの高校でもなく、かといって社会人のオフィスでもない、その間のどこかに位置する「大学の研究室」という空間特有の空気感。作者であるpolte氏の別作品でも似た背景が描かれていることを考えると、もしかするとご自身の個人的な経験が色濃く反映されているのかもしれませんが、といっても独特な場所設定だと思うんですよね。(残念ながらその場で伺うことはできませんでしたが)

二つ目は、「ゲームシステムと体験の独特さ」です。 なんとこのアドベンチャーゲーム、RPGのような「戦闘システム」が存在するのです。マザーシリーズからインスパイアされたという画面デザイン(個人的には『Undertale』が思いついたのですが)で繰り広げられるのは、ターン制コマンドバトルにマクロ入力要素を加えたような戦闘。 そして何より笑ってしまったのが、戦うべき「敵」が「散らかった靴下を片付ける」といった日常の『タスク(やるべきこと)』であるという点です。

残念ながら、後輩に手伝ってもらわないルートは見れてませんでした。きっと何かあるはず。

さらに面白いのが、この戦闘システムに主人公と後輩の関係性が深く関わっていること。 タスクを片付けるために「とりかかる」を選び、コマンドを入力して自力で敵(タスク)を倒すのが基本ですが、戦闘中に後輩のゲージが満タンになると「まかせる」というコマンドが解禁されます。これを選ぶと、なんと後輩が目の前のタスクを一瞬で退治(片付け)してくれるのです。 「え、これなら最初から全部後輩に任せればいいのでは?」とプレイヤーである私が首を傾げた瞬間、「ああ、きっと主人公のニトロも全く同じことを考えているんだろうな」と妙に納得してしまいました。

怪しい背景、怪しい状況、怪しい主人公と後輩。そこに生じる疑問を、この「怪しいゲームシステム」が見事に裏打ちし、作品全体の没入感を高める装置として機能しています。(言葉にするのは簡単ですが、このメタ的なバランスを取るのは非常に難しいことだと思います)

最後は前作を含め、チラシの撮った一枚を。

今回の体験版ではゲーム内時間で1日程度しかプレイできませんでしたが、「一体何なんだこのゲームは……」という良い意味での“モヤモヤ感”とともに席を立ちました。

ちなみに、作者のpolte氏はSteamで無料ノベルゲームも公開されており、本作と世界観を共有している作品もあるそうです。今日のレポートを読んで気になった方は、ぜひプレイしてみてください。あるいは、「どういうことか分からなくてモヤモヤする!」という方は、今週の日曜日(5月3日)に東京の浜松町で開催される「東京ゲームダンジョン」にも出展されるそうなので、そちらに足を運んでみてはいかがでしょうか。

一旦、川越の街角で小休止

点在している展示場に、漏れなく人が訪れていたのはすごいと思いました。

映像編集のような直感的なパズルで魅せる『MOP’N SPARK』と、日常のタスクをRPGの戦闘に昇華させた『PLEASE KNOCK』。どちらの作品も開発者のユニークな発想と「こだわり」が光る素晴らしい体験であり、川越という街のオープンな空気感がその没入感をさらに高めてくれていたように感じます。

さて、まだまだご紹介したい魅力的なタイトルがたくさんあるのですが、すっかり長居しすぎてしまったようです。一気に全てをご紹介するとカロリーが高くなってしまうかもしれないので、今回のレポートはここで【前編】とし、残りは【後編】に分けてお届けすることに。

続く【後編】でも、街歩きの中で私の心を掴んで離さなかった個性的なインディーゲームをさらに3本ご紹介する予定ですので、果たして次はどんな作品が登場するのか、ぜひ楽しみにお待ちいただければ幸いです。それでは、一旦ここでお茶休憩としましょう。後編のレポートでまたお会いします!