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SKOOTA GAMES IndieGames Notebook Interview
EVENT REPORT

「よく学び よく遊べ」――高円寺で交差する、開発者の“学び”とゲーマーの“遊び”【TIGS 2026 レポート】

by SKOOTA 2026.03.27
入り口から目線を引いていたあの言葉。
もはやTIGSの新しいキャッチフレーズなのか?と思ったほどでした。

こんにちは、SKOOTA GAMESのネゴラブチームに所属しております、モブです。

先週末の3月20日(金)から21日(土)にかけて開催されたインディーゲームの祭典「Tokyo Indie Games Summit(TIGS)2026」に行ってまいりました。今回から高円寺の「IMAGNUS(イマジナス)」という旧小学校の跡地へと会場を移し、ひとつの施設に集約されたことで来場者にとって非常に回りやすくなりましたね。

かつての教室や廊下が残る会場の入り口で、私の目を引いた一枚の銘木がありましたのでここに共有を。そこにはこんな言葉が掲げられていました。

「よく学び よく遊べ」

出展する開発者たちにとっては、ユーザーの生の声から「面白さ」を最前線で学ぶ場所。そして私たちインディーゲームファンにとっては、彼らが悩み抜いて作り上げた構造の中で無邪気に遊べる場所。この言葉は、まさにインディーゲームイベントそのものを象徴しているように感じました。

今回は、そんな学びと遊びが交差する学び舎で出会った、私の心を掴んで離さなかった3つのタイトルをサクッとご紹介します。

誰もが夢見た「あの組み合わせ」を具現化する ―― 『HIPS N NOSES』

まず最初にご紹介するのは、『HIPS N NOSES』です。一言で表すなら、「誰もが思い描く最高の組み合わせに、独自のスパイスを効かせた一皿」といったところでしょうか。

普段からゲームをプレイされる方向けに説明するなら、「カフェ経営シミュレーション」と「ヴァンパイアサバイバーライクな見下ろし型ローグライクアクション」の融合です。一方で、そういったジャンル名に馴染みのない方には、「昼はお客さんを迎えてカフェを切り盛りして資金を稼ぎ、夜は夢の世界で押し寄せるモンスターをなぎ倒して成長する物語」とお伝えするのが一番わかりやすいかもしれません。

どちらの説明を聞いても、かなり食指が動くタイトルではないでしょうか。新しい面白さを求めるコアなゲーマー層はもちろん、世界観やキャラクターの魅力に惹かれるカジュアル層にもアピールできる、非常に強力な求心力を持った作品だと感じました。

さて、ここで少しインディーゲームの開発事情について考えてみたいと思います。

本ゲームとは関係ないのですが、お話の参考までに。

今回のTIGSの入り口に置かれていた巨大なパネル。そのイラストの中には「遊びたいゲームは自分でつくる」という言葉が書かれていました。このイベントのテーマ性を表しているかのように思われるこのフレーズには、まさにインディーゲーム制作の真髄を込められていると私は思うんです。しかしながら不思議な事に、日本国内だけでも毎年何百という新作が生まれる市場において、「王道ジャンル × 王道ジャンル」という直球の掛け合わせは、意外にも盲点になりがちな選択肢だったりするのです。

「カフェ経営が好きだから、少し独自の要素を足してみよう」「ローグライクのシステムを少し変えてみよう」というアプローチはよく見かけますが、「誰が見ても面白いこの二つのジャンルを、わかりやすく合体させよう!」と真っ向から挑み、見事に形にしている作品には、案外お目にかかれないものだなと、このゲームを見てハッとさせられました。

なぜ少ないのか。その理由を今すぐ答えるのは相当難しいことですが、おそらく二つの異なるゲーム性を一つの作品として破綻なく「実装」し、バランスを取ることの難しさが立ちはだかるからじゃないでしょうか。なお、バラバラになりがちな二つの要素を繋ぎ合わせる、強力な「軸」が必要不可欠となります。

では、『HIPS N NOSES』におけるその軸とは何だったのか。それは間違いなく「アート性」です。カートゥーン調の絶妙なデフォルメが施されたキャラクターデザインと、それにマッチした3Dグラフィックが、会場でも多くの人の視線を奪っていました。

強い個性を持ったアートは、好みが分かれやすいという側面もありますが、そのアートに惹かれて一歩足を踏み入れたユーザーの前に、これほど興味深いシステムと世界観が待ち受けているというのは、間違いなくこのゲームの最強の武器になるはずです。

「ジャンルの融合」という言葉は簡単に口にできますが、この独特なアートスタイルが、すべての要素を包み込む器として機能している点には疑いの余地がありません。発売はもう少し先とのことですが、インディーゲームの新たな地平を切り拓いてくれるのではないかと、今から期待が高まる作品でした。

見えない恐怖を「利点」に変換するカタルシス ―― 『結晶姫のラビリンス』

遊ぶ前に一枚撮らせていただきました。

続いてご紹介するのは、『結晶姫のラビリンス』です。以前からSNSで見かけたキービジュアルが印象的で、ひそかにウィッシュリストに忍ばせていた作品でした。過去のイベントでもお見かけした記憶はあるのですが、実際に体験版をプレイできたのは今回のTIGSが初めてです。

プレイする前は、「特殊な能力を持つ少女が研究所から脱出する、ストーリー重視のアドベンチャーかな?」と想像していました。しかし実際に触れてみると、予想以上に「パズル」の比重が大きい作品であることに気づかされます。

「見えない敵から逃げる」という特殊な設定が、単なるホラー要素にとどまらず、ゲームシステムの中核として見事に機能しているのです。特殊な能力を使って一時的に敵の姿を視認するというギミックは、ホラー映画のネタとも似ていることが多く、自分の好きな映画『ライト/オフ(2016)』を彷彿とさせるような、独特の恐怖と緊張感を生み出していました。

また、ゲーム構造の「わかりやすさ」も注目すべき点です。「パズルを解く(ステージをクリアする)」→「ストーリーや世界観のヒントが得られる」というサイクルが繰り返され、3つのステージをクリアすれば次のエリアへ進めるという構成。もちろんゲーム内で説明はされますが、少しプレイすれば「ああ、こういう流れで進むんだな」と自然に理解できる、非常にユーザーフレンドリーな構造が垣間見えました。

「見えない敵」「怪しい実験を行う研究所」「片目のない少女(被験者)」……。アドベンチャーゲーム好きなら、文字を並べただけでよだれが出そうな魅力的な設定の数々。限られた体験版の時間の中では「もっと色んなことを知りたいのに!」と後ろ髪を引かれる思いでしたが、逆に言えば、正式リリース時に明かされる要素への期待値が極めて高いということでもあります。

システムの中核であるパズルに関しては、初心者から上級者まで楽しめるようヒントシステムが用意されていました。しかしそこは一人のゲーマーとして、「絶対にノーヒントで解いてやる!」という謎のプライドと挑戦心をくすぐられる絶妙な難易度が欲しくなるところです。ややこしいかもしれないですが、ただ単に「簡単であってほしい」わけではないんですよね。パズル特有の難しさとそれに伴う精神的な苦痛が、最終的に「自分の手でやり遂げた!」という快感に昇華される。それこそがパズルゲームの醍醐味だと、私は思うんです。(白状すると、私は最後のステージでどうしてもクリアできず、ヒントの誘惑に負けてしまいましたが……)

なぜそこまで夢中になれるのか。それは、このゲームにおける「見えない敵」が、単に最短距離でプレイヤーを追い詰めるだけの障害物ではないからです。多彩な個性を持つモンスターのメカニズムを理解し、敵がもたらす「脅威」を、自分が利用できる「利点」へと変換していく。これが本作の最大の魅力として作用しています。

開発者の優れた発想の数々がまな板の上に並んでいる中で、それらが適切に結びついていけば、アドベンチャーゲームにおける「ゲーム性への渇き」と、パズルゲームにおける「物語への渇き」を同時に潤してくれる作品になるのではないでしょうか。今回の体験版からは、そんな計り知れないポテンシャルを感じることができました。

未発売のゲームに触れる最大の喜びは、すでに面白いものがそのまま出るのを待つこと以上に、「未完成のゲームが、リリースに向けてどのように姿を形作っていくのか」という過程に立ち会い、期待できることにあると思います。少しプレッシャーをかけてしまうかもしれませんが、『結晶姫のラビリンス』がまさにそんな過程を楽しませてくれる作品になるであろうことに、私は高い期待を寄せています。

精緻な箱庭を“回す”メルヘンと狂気 ―― 『めくるりウィッチ』

SNSで見かけたゲームだ!!と思ってすぐに着席。

最後にご紹介するのは、ゲームを貫く独特なシステムがひときわ目を引いた『めくるりウィッチ』です。『まつろぱれっと』や『デスアンティーク』で知られる制作者、SleepingMuseumさんの作品と言えば、ピンとくる方も多いのではないでしょうか。調べてみたところ、ゲーム自体は2021年のBitSummitにも出展されていたようですが、最近になってSteamページが公開され、今回のイベントで再び出会うことができたようです。(制作が再開されたということでしょうか。だとしたら嬉しい!)

SleepingMuseumさんの他の作品にも共通して見られる、一度見たら忘れられない独特のアートスタイルがまず視線を奪いますが、それ以上にこのゲームの基盤となる「舞台を回す」という設定が、他のゲームではなかなか味わえない特異な体験を提供してくれました。

プレイヤーは、円形のステージが前後に何層も重なった舞台に放り込まれます。その様子は、まるでハムスターが上から回し車を走っているかのようです。左右のキーで舞台をぐるぐると回しながら、人形劇のような世界を探索していくのです。そして先述の通り、舞台は前後に層をなして重なっているため、左右に回すことで奥や手前の層への移動が可能になるというギミックも用意されていました。別々の層に配置された舞台を、まるでダイヤル式の錠前を解くようにガチャガチャと合わせていくパズル性は、非常に新鮮な感覚でした。

これだけでもプレイしていて十分に面白かったのですが、体験版の最後に待ち受けていたボス戦では、タイミングと瞬時の判断力が要求される「アクションゲーム」へと見事に変貌し、今後の展開への期待値がさらに跳ね上がったのです。

本作に期待したい点は山ほどありますが、私が個人的に最も注目したのは「アートとゲームの相性」です。 先ほども触れた通り、このゲームのアートはかなり独創的です。基本的には線画の密度が高い単色系のアートが、画面全体を埋め尽くしています。このゲームは、左右に動くという「平面的」な操作と、前後に移動できるという「立体的」な操作が噛み合うことで、目の前にあるオブジェクトの遠近感が自然に生み出されます。これが高密度の線画と合わさることで、不気味でありながらもどこか可愛らしい、メルヘンチックな雰囲気を醸し出すことに一役買っていると私は思うんです。

人によっては好き嫌いがある部分かもしれませんが、個人的には、この細密な線画が一番手前の層と一番奥の層でそれぞれ違う味わいを生み出し、まるでひとつの精巧に作られた「箱庭」を覗き込んでいるような錯覚に陥りました。 そんな美しくも狂気的な舞台を、自分でぐるぐると回しながら楽しめるストーリーとパズル。これを前にして、心躍らないゲーマーが果たしてどれほどいるでしょうか。

すでにSleepingMuseumさんのファンとして本作の存在を知り、フォローしているインディーゲームユーザーも少なくないとは思いますが、この独創的なゲーム性と目を引くスタイルが、より多くの方の目に留まってほしいという願いを込めてご紹介させていただきました。

Mekururi: Dizzying Witch

終わりのチャイムが鳴る前に

ビジネスデーだから、というのもあると思いますが、
吉祥寺の時よりは広かったので遊びやすかったです!

ジャンルの融合、逆転の発想、そして視点とアートの見事な連動。今回ご紹介した3つの作品は方向性こそ違えど、どれも開発者の方々の並々ならぬ「こだわり」がぎっしりと詰まっていました。

イベント会場で作り手と遊び手が直接熱量を交わし合う空間は、何度足を運んでも良い刺激になりますね。

さて、すっかり長居してしまいましたが、そろそろ現実の業務に戻らなければなりません。適当にゲームを作って定時退社を夢見る私ですが、彼らの情熱に当てられて、もう少しだけ自社のタイトルの開発に向き合ってみようかなという気になっています。

皆様もぜひ、気になったタイトルがあればSteamのウィッシュリストに登録して、彼らの「遊び」を体験してみてください。それでは、また次回のレポートでお会いしましょう!